『FUNHOME』を観劇して
先日、『FUNHOME』というミュージカルを観た。
ゲイだった父親が自殺した年齢に、レズビアンの主人公がなったのを機に、過去を振り返るという話だ。
常に主人公の視点で物語が進むため、父親の心境については一切触れられていないが、印象的だったのは父親の苦悩だ。
父親は、自分がゲイであるという事実を、受け入れることができていないのかもしれない。
それゆえ、”素敵な家”に暮らす”立派な父親”を演じ、家族にも”完璧”を強要していた。
ところが主人公である娘は、大学生になったとき、「私はレズビアンだ」と家族に告白する。
そして主人公は、好きになった女性と一緒に、父親のいる実家に帰った。
レズビアンの自分を受け入れることができた娘の姿を見て、父親は動揺したのだろう。
なんとか取り繕って生きてきた自分の人生を、否定されたように感じたのかもしれない。
その後、父親は自殺をしてしまう。
主人公である娘にとっては、自分と似た境遇を持つ父親に、レズビアンの自分を認めてもらいたかった。
しかし父親は、ゲイの自分を受け入れられない未熟さを持っていたため、完全な和解はできなかった。
これらの父親の苦悩はあくまで推測だが、父と娘が心を通い合わせることができなかった悲しさが、ジワジワと襲ってくる作品だった。