ボロアパートの住人は今
アパートオーナーをしている父に、「あんなボロアパート、早く壊しちゃえばいいのに」と、学生の頃よく言っていた。
それに対し父は、「あんなボロアパートでも住む人がいるんだよ」と答えていた。
月3万円で築40年の風呂なしボロアパートのオーナーの娘であるとは、学生時代は恥ずかしくて、誰にも言えなかった。
しかも住人が孤独死をすることも度々あり、周りの住人から「あの部屋から異臭がする」と苦情が入ると、父はマスターキーを持って部屋に確認をしに行き、その後警察を呼んで、住人の最期の姿に立ち会っていた。
そんな父を見るたび、なぜここまでするのかと疑問も感じていた。
その後、ボロアパートは取り壊され、祖父母の相続税分として土地は売られ、今は知らない家族が建売住宅に住んでいる。
僅かに我が家の資産として残った他のボロアパートも、今は取り壊され、新しいアパートとなっている。
あのボロアパートの住人達は、その後どうやって暮らしているのか。
この番組を見て、恐ろしくなった。
「ボロアパートでも住む人がいる」という父の言葉の意味が、今ようやく理解できた。
連帯保証人がいたとしても、家を借りることがなかなか難しい世の中だ。
あのボロアパートの住人は、さぞかし苦労していることだろう。